Interview : アドビシステムズ CBU Product Management Web and Video

スマートフォンやタブレットの登場により Web 制作に対する要求がますます複雑化する中、効率的な制作環境実現の重要性は増すばかりだ。Dreamweaver は、プロフェッショナル向けの Web 制作ツールとして、最新バージョンの CS5.5 で メディアクエリや jQuery Mobile のサポートなど、HTML5 やデバイス向けの技術にもいち早く対応した。 Edge や Muse といった新しい HTML 制作ツールの提供や、Adobe MAX 2011 で発表された Creative Cloud という新しいサービスなど、アドビから Web 開発に対する様々な提案がなされる中で、Dreamweaver はどのような役割を果たしていくのだろうか。Dreamweaver の製品マネージャの Scott にインタビューを行い、Web 開発を取り巻く状況や Dreamweaver の方向性についてどのように考えているのか取材した。

アドビシステムズ CBU Product Management Web and Video

アドビシステムズ CBU Product Management Web and Video

Dreamweaver の使命は Web テクノロジー利用の敷居を下げること

–HTML5 の登場、デバイスの普及は Web 制作にどのような影響を与えていると思いますか?

スコット

「HTML5 は Web デザイナーと Web 開発者にすばらしい機会を提供していると思います。今日までデスクトップ環境の制作に役立てていた技能をそのままモバイル環境に利用できるのはもちろんのこと、Canvas, SVG, CSS アニメーション/トランジションなどにより実現されるインタラクティブは、WebKit がモバイル環境のデファクトと言える程に普及したことと相まって、Web プロフェッショナルにかってない表現力を与えています。これにより、従来の Web の 「ユーザの操作に受動的に反応する」モデルは置き換えられていくことでしょう」(スコット)

–そのような状況下における Dreamweaver の持つ役割をどのように捉えているのでしょうか?

「Dreamweaver は、これまで常に、難しい作業を容易にする、複雑な工程を分かり易くする、という役割を果たそうとしてきました。我々は HTML5 による変化に対してもこの努力を続けています。例えば、最新バージョンの CS5.5 では、メディアクエリの管理機能や、マルチスクリーンプレビューなど、モバイル優先の制作への移行を支援する機能を追加しました。また PhoneGap (*脚注 1) の統合により、モバイルアプリの開発も可能にしています。もちろんこれらの新しい機能だけでなく、Web プロフェッショナルが日々行う作業に必要な幅広い機能を提供することで、Dreamweaver はプロ用の Web 制作ツールであると自負しています」(スコット)

Dreamweaver は Web 制作作業の主役として他のツールを補完、制作ワークフローを完成させる

–最近登場した Muse は Dreamweaver と同じような機能を提供しているようです。両者はどのような関係になるのでしょうか?

Dreamweaver

「Muse は特定の利用者、すなわちデザインが専門で、Web サイトやインターフェースをごく短期間に構築する必要がある人のための製品です。全ての作業はビジュアル環境で行い、HTML/CSS/JS への変換は Muse が行うため、コーディング作業は不要でサイト構築ができます。Dreamweaver と全体の制作ワークフローは似ていますが、Muse は専門の Web 開発者を含まない小規模な開発を行うユーザに向けた製品です」(スコット)

–HTML 関係では、最近 Edge というツールも登場しました。

「Edge は HTML5 ベースのアニメーション制作ツールです。Dreamweaver で制作中のページにアニメーションを取り込む場合、Dreamweaver と Edge の関係は Dreamweaver と Flash Professional の関係と同じと言えます。しかし、Edge では、既存の Dreamweaver のページを開いてそこにアニメーションやトランジションを追加する、という使い方もできます。Edge は、インタラクションデザイナーやアニメーターが、自分たちのスキルをWeb 標準の環境で活用するのに役立つでしょう。そして Dreamweaver は、より広範な機能を提供する Web 制作ツールとして Edge や Muse を補完し、Web 制作者が Edge や Flash や Muse からの出力を取り込みながら、サイト構築のワークフロー全体をサポートします」(スコット)

jQuery Mobile と PhoneGap はモバイル向けネイティブアプリの最も容易な開発環境

–Adobe MAX 2011 では Typekit の買収が発表されました。これは Dreamweaver に何か影響を与えるでしょうか?

「Typekit は Web フォントサービスの世界のリーダーです。この買収により、Web を閲覧する側、制作する側双方にとって、より豊かな文字タイプの体験が実現できると期待しています。殆どの Dreamweaver ユーザ、そして Web プロフェッショナル全体としても、Arial など従来の標準フォントに縛られる状況を変えたい、と願っていると思いますよ」(スコット)

–PhoneGap の Nitobe の買収も発表されましたね。

「PhoneGap は、今後も Dreamweaver のモバイル向けネイティブアプリ構築の基礎技術となるでしょう。 PhoneGap:Build サービス (*脚注 2) が利用できることで、ネイティブ開発用の SDK をローカルに設定するやや面倒な作業も不要になります。PhoneGap チームと一緒に、Dreamweaver の PhoneGap サポート機能の改善や、新しい機能の拡張ができることを楽しみにしています。実際、PhoneGap はすばらしい技術だと思います」(スコット)

–jQuery Mobile に対する投資も続けるのでしょうか?

「はい。もちろん jQuery Mobile にも引き続き力を入れていきます。Dreamweaver はいち早く jQuery Mobile をサポートしましたし、最近はスキンデザインのための機能拡張も公開しました (*脚注 3)。jQuery Mobile と PhoneGap の組み合わせは、ネイティブコードでの開発と同じレベルの機能を、ずっと少ない時間で実現します。それぞれの技術を、更に先に進める作業に関われる機会を持てたことにはとてもワクワクしています。両者をよりよい方法で連携させて、よりスムースな開発プロセスを実現したいと思っています」(スコット)

新しいタッチアプリ “Proto” と Adobe Creative Cloud が開く新しいワークフローの可能性

–Adobe MAX 2011 で発表されたタッチアプリの一つで Proto という簡単に Web ページを作れるツールには、これまでのアドビのツールには無い新しさを感じました。

Adobe MAX 2011

「Proto は、ワークフロー上の問題を解決するものです。殆どのプロジェクトは Dreamweaver を使い始めるずっと前に、デザインカンプやワイヤーフレームのドラフト作りから始まるでしょう。Proto は、プロジェクトの初期段階において、ブレインストーミングをしたり、何回もアイデアを練り直す際の作業を単純化、効果的にします。タブレットで動作するため、開発チーム内やクライアントとのミーティングの場所で、各々の参加者に手渡しながら、実際に操作してアイデアを確認しては修正するといった使い方が可能です」(スコット)

–いままでのアドビのツールがサポートしていなかった、より広いワークフローがカバーされそうです。 明確に情報設計を意識したツールは、アドビとしては始めてではないでしょうか?

「Web プロフェッショナルのワークフローを、Dreamweaver やデザインツールを使った制作作業の始まるずっと前の時点にまで視点を広げて議論を行いました。我々にとっても、新しいハードウェアの大きさ、形、操作方法が、ワークフローのある時点でユニークな価値を提供できるかもしれないという可能性を見つけることは、新鮮で興奮を覚える作業でした」(スコット)

–Adobe MAX 2011 で発表された Creative Cloud 、Proto と Dreamweaver の組み合せは、新しい開発スタイルを実現できそうです。

「Creative Cloud が実現する世界を予測するのは実に刺激的です。クライアントや開発チームとアイデアを交換するために会議室に集まって、タブレットを交換しながらプロジェクトの初期プロトタイプの見直しを繰り返す。作業の結果はクラウドに自動的に同期されていて、オフィスに戻ったら Dreamweaver のようなデスクトップアプリで最新のデータを開いて作業の続きを行う。正直、そんな世界の実現が待ちきれません。Web プロフェッショナルの皆さんも同じ思いだと期待したいですね」(スコット)

*1 PhoneGap は HTML + CSS + JavaScript を用いて、モバイルデバイス向けのネイティブアプリケーションを開発するためのフレームワーク。対応するプラットフォームは、iOS, Android, BlackBerry, Symbian など。

*2 PhoneGap:Build はネイティブアプリを生成するオンラインサービス。ローカルで開発したコードをアップロードすると、PhoneGap が対応する各プラットフォーム向けのアプリを生成できる。

*3 Adobe Labs に公開された Fireworks CSS3 Mobile Packは、jQuery Mobile テーマ用のスキンを CSS として書き出し、Dreamweaver に渡すことができる。

使用したアドビ製品

事例データ

使用したWeb技術 HTML5, jQuery, jQuery Mobile

取材協力

会社名 アドビシステムズ CBU Product Management Web and Video (http://www.adobe.com/jp/)
スタッフ
  • Scott Fegette Adobe Systems
    CBU Product Management Web and Video Product Manager
    Scott Fegette
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