Interview : 一般財団法人 塩尻市振興公社

2010年秋、長野県の塩尻市で、ひとり親の家庭を対象とした在宅就労支援のためのプロジェクト『KADO-家(KA)で働く(DO)』がスタートした。家事と仕事の両立で、新しい技術を学ぶことが難しいひとり親の人たちに自立の機会を提供し、将来に役立ててもらうことを目的としている。
自治体が率先して、ICT(情報通信技術)の技術を学んでもらう機会とともに、自立の支援を提供する試みはこれまでにあまり例がなく、同プロジェクトは全国の自治体から注目をされている。今回、塩尻市にお伺いして、プロジェクトの立ち上げから、将来の展望までを取材した。

一般財団法人 塩尻市振興公社

一般財団法人 塩尻市振興公社

現在、長野県塩尻市には総人口の約7万人に対し、およそ700世帯のひとり親家庭が存在している。家事と仕事を両立しなければならないひとり親家庭にとって、収入の安定した仕事に就職することは重要な課題だ。

長野県にはEPSONを初めとする多くの電機メーカーやICT企業が存在している。この背景をうまく利用し、ひとり親家庭の人たちにも在宅でICT関連の仕事に従事してもらい、安定した収入を得られる機会を創出し、事業化したいというのが同プロジェクトの狙いだ。

好調なスタートを切った”KADOプロジェクト”

–KADOプロジェクトがスタートした経緯を教えてください

「そもそも、このプロジェクトは厚生労働省が行ったひとり親家庭支援事業公募に対して、塩尻市が企画書を提出したことがきっかけて始まりました。塩尻市の福祉課が窓口となり、実際の業務は財団法人である塩尻市振興公社が委託の形で請け負っています。」

–福祉事業の一環としてスタートしたということですか?

伊東

「そうですね。今回、福祉とICT関連事業という、関連性のない二つのキーワードをうまくまとめあげ、スムーズにスタートできた背景には、塩尻市振興公社の存在が大きかったと思います。市行政という縦割り組織に対して、民間的な経営感覚を持った財団法人が間に入ることで、スムーズな事業の運営を可能にしました。」(伊東)

–塩尻市民からの反応はいかがでしたか?

「塩尻市内だけでなく、市外からの問い合わせも多くいただきました。今回のプロジェクトは福祉事業の一環ですので、受講されている期間に手当が支払われます。このことも反響が大きかった一因ではないかと。しかし、実際に受講を希望する人の話では、手当よりもこうした機会を与えてもらうだけでもありがたい、という声が多数でした。」(太田)

–現在どのくらいの人たちが受講しているのでしょうか?

「現在、長野県塩尻市には総人口の約7万人に対し、およそ700世帯のひとり親家庭が存在しています。定員の140名はすぐに集まり、そのうちの50名がWeb制作の講座を受講している状況です。およそ1年半の間にIT技術の基礎から応用までを学んで、将来的に在宅でWeb制作や文書作成などのIT関連業務の仕事を提供する予定になっています。」(太田)

–プロジェクトスタート当初に比べて、受講者のスキルは向上しましたか

柳澤

「半数以上の人たちはパソコンにあまり詳しくない状況でした。普段、メールやWebサイトの閲覧をすることはあっても、それがどのような仕組みで動作しているのかを理解している人は居ませんでした。そのため、受講者は半年間をかけてパソコンの基本操作やインターネットの仕組みを学ぶ基礎訓練プログラムから始めています。また、受講者募集の際に一人ひとりと綿密な面接を行って、各個人の家庭事情から現状スキルまで入念な調査を行い、受講参加後にも、ヒアリングやアンケートを頻繁に行うなど、それぞれの家庭事情に応じた細かいケアーにも気を使っています。その成果もあって、家庭の事情や就職した人を除いて、ほぼ全員が応用訓練プログラムへと進むことができました。」(柳澤)

プロジェクトが抱える今後の課題

–KADOプロジェクトは今後どのように進められていくのでしょうか

「プロジェクトを継続させるためには、受講者のスキルアップはもちろんのこと、塩尻市振興公社が受講者に対して仕事を発注できる体制を作らなければなりません。起業に関する専門家を招待してセミナーを開き、アドバイスをしてもらうなど、プロジェクトの事業化に取り組んでいる最中です。」(太田)

–具体的にはどのような企画をお考えですか?

「現在、注目しているのは地域ポータルの運営です。観光案内や防災情報などの地域におけるニッチな情報を発信し、地域に貢献しつつ事業を行うビジネスモデルを考えています。地域で情報を創出し、全国に発信することで、地元の活性化にも役立ち、かつ受講者の生活安定にも貢献することができるはずだと考えています。今後はCS5.5で得たスキルが大いに役立つことでしょう。」(太田)

–CS5.5 Web Premiumに対してどのような期待をしていますか?

太田

「CS5.5 Web Premiumでは、iPhoneやAndroidアプリが開発できるようになりましたので、スマートフォンも見据えた事業にも注目しています。地域SNSを作って、スマートフォンを通じて地元の商店の情報を提供したり、話題のFacebookと連動させるなど、アイデアは色々あります。受講者のスキルの向上とともに、こうした事業化に対する意識も芽生えてくるのではないかと期待しています。受講者の中にはグラフィックスが得意な人、HTMLコードを書くのが得意な人など、個性豊かな人材が集まっていますので、それぞれが個性を活かし、KADOプロジェクト全体がひとつのチームとして大きなプロジェクトを創り上げることができたらと考えています。」(太田)

–CS5.5 Web Premiumを利用するメリットをお聞かせください

「ご存知のとおりWeb制作は、フリーウェアのテキストエディターやグラフィックソフトを使って作成することも可能です。しかし、Web業界のデファクト・スタンダードであるAdobe製品を使うことでプロとしての意識を身につけてもらうということと、最新版を使うことで、既存のユーザーに対する新規ユーザーとしてのアドバンテージになると考えています。」(太田)

使用したアドビ製品

事例データ

事例カテゴリ インタビュー
プラットフォーム スマートフォン
使用したWeb技術 HTML5

取材協力

会社名 塩尻市振興公社 (http://www.s-sip.jp/kousha/)
会社概要 2010年夏ごろに設立された塩尻市の一般財団法人。人材の育成や施設の運営、管理などを主な業務としている。
スタッフ
  • 柳澤 佳子 一般財団法人 塩尻市振興公社
    在宅就業支援部門
    統括マネージャー
    柳澤 佳子
  • 太田 幸一 一般財団法人 塩尻市振興公社
    在宅就業支援部門
    サブマネージャー
    太田 幸一
  • 伊東 直登 一般財団法人 塩尻市振興公社
    総務課長
    伊東 直登
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